「ダムが遮断した土砂をいかに下流に届けるか」をテーマとして、流砂環境の改善につながる土砂管理を研究します。治水・利水機能を維持しつつ、環境と調和させる新たな道を探求します。
河川流域には様々な問題があり、洪水や渇水のように多すぎる水や少なすぎる水といった水問題の他に、土砂災害、ダム堆砂、河床低下、海岸侵食、河川環境劣化のように多すぎる土砂や少なすぎる土砂といった問題も存在します。ダムによる流水の貯留とトレードオフの関係にある土砂の連続性遮断の問題を、流砂系の総合土砂管理の枠組みとして改めて考えるとともに、その一番の鍵を、「ダムの土砂管理=河川の流砂環境の再生」と定義し、これを進めていきます。
流砂環境再生は、持続可能な土砂管理の一環として位置付けられています。土砂の適切な管理は、洪水リスクの軽減や河川環境の保全に直結しています。これらの問題は放置すると後世に負担を回すことになることから、時機を踏まえ「世代間の衡平(こうへい)」を意識して、サスティナブルに1000年ダムの実現に向けて土砂堆積問題の解決に取り組んでいきます。これらの課題に対して、柔軟かつセクター間を超えて連携するような解決策を進めるためには、個々の組織では情報や経験が限られるとともに、どうしても解決策が「個別最適」に留まり、治水、利水、環境の観点からの「総合的な流域マネジメント」の「全体最適解」を議論することには困難性が伴うことが考えられます。このような課題に対して、以下のような研究項目を進めていきます。
流入土砂により有効貯水容量が減少しているダムにおいて,通砂バイパストンネルを計画しています。土砂を通過させるバイパストンネルは、山岳地域の中規模以下のダム貯水池に適する堆砂対策として、日本やスイスで採用されています。100年前に建設された神戸の布引五本松ダムには、世界に先駆けて導入され、ダムの長寿命化に大きく貢献しています。近年では、旭ダム、美和ダム、小渋ダム、松川ダムなどで設置され、洪水時に土砂を通過させることで、環境に適合する方法として評価されています。現在、幌加ダム(電源開発㈱)でも建設が進められています。